時短勤務で育休復帰したい教員必見!管理職への伝え方は?相談・交渉のコツ
「あんなに忙しい学校現場。果たして子育てをしながらやっていけるのだろうか・・・」
ただでさえ不安な育休復帰。少しでもスムーズに復帰するために、そして家庭と仕事を両立させるために、復帰直後はフルタイムではなく、育児短時間勤務や部分休業などの制度を検討されている方も多いと思います(「子を養育するために認められている勤務形態」を、以下まとめてここでは「時短勤務」と表します)。
けれども、昨今の学校現場は人手不足。育児短時間勤務の代替教員が見つからなかったり、時短勤務だからといって担任外になれるという保証はなかったりすることも。
かといって、「他の職員に迷惑がかかるから」という理由だけで「とりあえずフルタイム復帰」という選択をするのはキケンです。フルタイムを選択するにしても、総合的に判断した上で、納得して選択しないと後々苦しくなるからです。キケンといったのは、フルタイム復帰そのものではなく、他人軸で「とりあえず」と決めること。
大事なのは、現場の状況も理解しつつ、「今の自分に合った働き方」を考え、それが実現するようにしていくことです。
そこで今回は、実際の事例も交えながら、時短勤務を申し出る際の管理職への交渉・相談のしかたのポイントをお伝えします。
事前準備ですること
①情報を集める
意外に思うかもしれませんが、管理職が制度の全てについて熟知しているわけではありません。以前、私のクライアントの勤務する校長が、育児短時間勤務と部分休業を勘違いしたまま話を進めていたなんてこともありました。
面談では、あくまでもお願いするスタンスでいる必要はありますが、こちらが主導権を握るぐらいのつもりで、事前の情報収集が必要です。
まずは、使える制度にはどんなものがあるのか。それぞれの働き方のメリット・デメリットについて知る。知り合いで取得経験者がいれば、実際に取得してどうだったか聞いてみるのもいいでしょう。
育児短時間勤務・部分休業・育児時間の違いについてはこちらをご覧ください
⇒ 【育休復帰】時短勤務は、教員には無理?
福利厚生に関する制度などをまとめた冊子を出している自治体も多いはず。法規を読むよりも分かりやすいので、こうした冊子で理解を深めるのもおススメです。
自力で調べた上で不明な点は、事務職員に尋ねてみるのもよいでしょう。すでに取得した職員に対応した経験がある方ならば詳しいはず。分からなくても、調べて回答してくれるかもしれません。
②時短勤務を選択する理由を明確にする
一番大事なのが、時短勤務を選択する理由を明確にすること。
メリットだけの選択肢はありません。「私はこのために○○という働き方をするのだ!」という明確な理由がないと、デメリットが発生した場面で「やっぱり○○にしなければよかった」という思いを持つことになります。
ただ単に「子育て中で大変そうだからとりあえず」では、説得力がありませんね。
パートナーの勤務地が遠い。パートナーが単身赴任でワンオペ。両実家ともに遠方で頼れない。子どもを療育に通わせる必要がある。
など、自分自身の中で「時短勤務という働き方でなければいけない理由」を明確にしておくのです。言い方を変えると、「時短勤務にすることで得られる時間をどう使うのか」をはっきりさせておくことが大事です。
これをしておかないと、せっかく取得できたとしても、「仕事が終わらないから」とか、周囲への遠慮からという理由で、残業しかねないからです。
もう一つの注意点としては、「担任を持ちたくないから」という消極的な理由だけで時短勤務を選択しないこと。
今の学校現場は、産休・育休世代が増えており、同じように時短取得希望者が増えています。特に小学校は担任外の枠は限られており、「時短勤務=担任外」とはならない実情が。
実際に、私のクライアントの中にも、育児短時間勤務を取得しながら低学年の担任を持ったというケースがあります(自身は給食指導まで、午後の代替教員が清掃指導~5時間目・下校指導を担当)。
仮に、年度当初は担任外でスタートできたとしても、担任が病休に入ったクラスの代替が見つからないため、校内のスライド人事で年度途中から担任に入らざるを得ないというケースもあるのです。
また、担任外の場合、自分が休んだ際の授業の振り替え調整が必要になったり、空きコマには、担任不在のクラスに急遽自習監督で入ることがあったり(そもそも空きコマはなかったり)、担任とはまた別の大変さがあると聞きます。
よって、どのポジションになったとしても、「その働き方をしながらどうやってその業務にあたっていくか」と考える必要があります。
担任or担任外というポジションは、あくまでも手段。まずは、「時短勤務にすることで得られる時間をどう使うのか」とシンプルに考えておくことが重要です。
③ ①・②について夫婦で共有する
そして、大事なのは、これら①②について夫婦で共有すること。
よく見られるのが、「私が何とかしなくては!」と、自分一人で考えてしまうケースです。
でも、育休からの復帰や、共働きを継続させていくことは、「家族の課題」ですよね。であるならば、夫婦で情報を共有し、考えや想いを一致させておく必要があります。
②について夫婦で具体的に考えることで、パートナーも働き方を見直すきっかけになることもあるのです。
・交代で育休を取る
・時短勤務を検討する
・勤務地の変更希望を申し出る
・テレワークを導入できないか検討する
・職場でのポジションや業務量を調整してもらう
・退勤時刻を早める
など、パートナー側にできることもあるはず。
私のクライアントの中にも、自分と交代でパートナーが育休を取るという方がジワジワ増えています。パートナーが育休を取得することで、敢えてフルタイムで復帰して、早目に仕事に慣れてしまおうという考え方もあります。
もちろん、パートナーの仕事状況によってできることは異なるでしょう。だからこそ、早目にお互いのキャリアプランや復帰後の理想の暮らしについて話し合い、夫婦の結論としてご自身の働き方を選択することをおススメします。
管理職との面談で心がけたいこと
働き方が決まったら、できるだけ早く管理職との面談の機会を持ち、希望を伝えておきます。特に育児短時間勤務の場合、代替教員の手配が必要になるため、早いに越したことはありません。
では、実際の面談の場面では、どんなことに気を付けて相談・交渉すればよいのでしょう。
① 時短取得希望とその理由を分かりやすく伝える
まずは、ご自身の最大限の希望を伝えます。「できれば」とか「状況が許すなら」という控えめな気持ちでいると、拒否されたり伝わり切らなかったりする可能性があります。
育休をいただいているおかげで日々育児に専念できていることの感謝を伝えつつ、ここは毅然と且つ爽やかに、時短取得希望とその理由を分かりやすく伝えます。
事前準備の②③でしっかりと考えられたかどうかが、ここに関わってきます。
必要に応じて、書面にまとめていくのもよいでしょう。私のクライアントの中には、パートナーが作った表を時短勤務取得の必要性の根拠として示した方も。
結果、「夫婦で考えての結論」「夫の協力もある上で制度も必要」ということが伝わって了承されたようです。
また、「そこまでしっかり考えているのでしたら、できるだけ希望に沿えるようにしましょう」と言われたという方もいます。
いかに、「単に子育て中で大変だからとりあえず時短」ということではなく、幅広い視点で熟考した末の結論であるということが伝わるか、ということが大事だと言えますね。
また、「できること」や「意欲」もセットで伝えるとよいでしょう。
たとえば、
・早く帰る分、朝は余裕があります。年休をとられる先生のクラスの朝の会などに入らせていただきます。
・高学年経験が多いので、理科専科や家庭科専科もできます。
など。
無理をして背伸びする必要はありませんが、できることも伝えることで、管理職にも具体的にイメージしてもらうことができます。
② 職場の状況にも配慮する
とはいえ、職場の人手不足が深刻なのも事実。職場の状況や管理職の苦悩にも配慮しながら交渉すると、スムーズに進むことが多いです。
それには、「どこまで歩み寄れるか」をあらかじめ準備しておくことが大事。
・本当は、4時間55分の育短が希望ですが、代替が見つかりやすいパターンならそれでも可です
・本来は、育短がベストですが、難しければ部分休業を取らせてください
・小規模校の本校だと難しそうなら、異動も検討します
など。
譲歩案は、最初からは出しません。職場の事情も理解できる!となった時に、最後の最後に出す(もしくはいったん学校側の意向を持ち帰り、2回目以降に出す)イメージです。
③ 「仕事を続けるために『今』この働き方が必要なのだ」という意識
希望を最大限聞いてもらえるか、学校事情から「否!」と言われるかは、残念ながら、校長によって大きく異なるようです(器の大きさ?考え方?)。
たとえ欠員になったとしても、職員の希望は最大限優先するという校長もいれば、「後補充代替が見つからない=取得させるのは難しい」と答える校長がいるのも事実です。
本来、権利であるはずの制度が、人手不足によって思うように使いにくいというのは、なんとも悲しい現実ですね。
あるクライアントは、家族の状況から、育児短時間勤務で復帰できないなら退職せざるを得ないと考えていました。
一度目の管理職面談で、「育短での復帰は厳しい」と言われてしまったため、「でしたら退職します」と伝えたところ、後日育短取得OKの返事をもらえたとのこと!
本気が伝わったということですね。
誰も、ラクをしたり、怠けたりしたくて時短を取りたいわけではありません。給料が減ってでも時短を取るには、それ相応の理由があるわけですね。
大事なのは、「仕事を続けるために『今』この働き方が必要なのだ」という意識。無理な働き方をして万が一退職することになるよりは、長い目で見た時の職場貢献にもなるということ。これを、相手にも分かってもらうには、自分自身がこの必要性をしっかり握っておく必要があるということです。
実際に復帰したら
めでたく希望が叶って復帰できたとしたら、自分の働き方を周囲に理解してもらう努力は、自分からしていきましょう。
制度について、職員は意外と理解していないものです。
「管理職がアナウンスしてくれるはず」「皆が配慮してくれて当然」ではなく、着任時の挨拶で伝える、担当チームに自分の働き方について発信するなど、タイミングを見ながらしていきたいところ。
その際も、「できないこと」と「できること」をセットで伝えるという姿勢が大事です。
そして、在勤時間が短いからこそ、学校にいる間は、積極的にコミュニケーションを取りにいく。
できる時に、できることで貢献していく。
高望みをせず、そんな風に考えたらいいのかなと思います。
どうか、今のあなたに合った選択と持続可能な働き方ができますように。
また、子育て世代に限らず、介護休暇や本人の病休なども増えているのが現場の実情です。「お互い様」の精神が持てる職場環境であることを願っています。
Sukkiri-Styleでは、働き方の選択や、管理職への交渉についてのご相談もお受けしています。
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